東慶寺(寺院墓地)の探訪・紹介コラム。著名人お墓も紹介。

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こんなお墓がいいね!~掃苔日和~

第三回 寺院墓地「東慶寺」(臨済宗円覚寺派)篇

北鎌倉の「東慶寺」を訪ねました。
今年公開の映画「駆け込み女と駆け出し男」の舞台となったお寺です。
原作は井上ひさし著「東慶寺花だより」。江戸時代には、「夫と別れたい」という妻たちが駆け込んだお寺でした。「東慶寺花だより」(文春文庫)の井上氏のあとがきで、ここに多くの著名な哲学者や文学者が眠り、そしてあのアバンギャルド赤瀬川原平(前衛美術家。ペンネーム尾辻克彦名義「父が消えた」で芥川賞受賞)の不思議なお墓があることを知り、北鎌倉に向かいました。

 

「東慶寺」は北鎌倉駅から徒歩5分。横須賀線を挟んで「円覚寺」の斜め向かい、鎌倉街道に面したところにあります。街道を右に折れると、すぐに石段が見えます。駆け込み女たちが駆け上がった石段です。門をくぐると、石畳がまっすぐに伸び、樹木に囲まれた墓苑に続いています。墓苑は松ヶ岡と呼ばれる小高い丘の中腹にあり、よく育った樹木に包まれ、とても静かな佇まいです。なんだ、この居心地の良さは・・?「気」がいい感じです。訪れたのは7月下旬の猛暑日の昼時でしたが、時折涼風が流れ、暑さもやわらいで感じます。

 

ゆるやかな斜面が奥に続く、程よい大きさの墓苑。手前左側の一画に、赤瀬川家のお墓がありました。なるほど、聞いていたとおりの「土饅頭型」。想像していたより小ぶりで、かわいいです。「モンブラン」ケーキのようにも見えます。奇抜なデザインという印象はなく、周りのお墓とも馴染んでいて、違和感はありません。石のカケラを積み上げ、隙間に土を押し込め、その表面に苔を張り、天辺にチョンマゲみたいな盆栽用の五葉松を植えたそうです。

 

このお墓づくりの経緯については、赤瀬川氏著の「『墓活』論」(PHP新書)に詳しく書かれています。まず場所が気に入り、石材店の紹介でご住職と会い、雑談の中で打ち解け、檀家になることをいとわず、ここにお墓を建てることを決意。その後、設計を旧知の設計家に依頼。材料の石集めと石積みは赤瀬川兄弟も参加し、完成させたそうです。

 

こんなお墓がいいなあ。こんなに自由でいいんだ!

 

歴史と格式のある「東慶寺」の墓苑で、赤瀬川氏(お墓建立後、2014年死去)は、鈴木大拙、小林秀雄、高見順、岩波茂雄、和辻哲郎、谷川徹三といった知の巨人たちと一緒に、彼らしいお墓の中で楽しげに気持ちよく眠っているに違いありません。ここには、日本人最初のオリンピック金メダリスト、三段跳びの織田幹雄、東京オリンピック女子バレーの監督大松博文のお墓もあります。江戸時代に離縁を望む女性たちをやさしく迎え入れたお寺は、今も様々な人たちを惹きつけ、懐に包み入れているようです。安らかな場所です。

 

ライター:OHSAMA

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離縁を望む女性たちが駆け上がった石段

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赤瀬川家のお墓がある一画

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大きな木々に囲まれています

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緑の中の静かな墓苑